仮想化でプリセールスしてるSEの一日

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Windows Server 2012 ODX 機能の使い勝手 - (4) 導入効果とまとめ

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(1) (2) (3) (4) (deep dive)

Windows Server 2012 ODX の概論の最後として、導入効果や将来性・検証時のポイントについて述べたいと思います。
※ 当初ここで深い情報を予定していましたが、マニアックなので別の機会にします。


ODX を導入するとどれくらい早くなる??


これは頻繁にいただく質問なのですが、相対比については既存の環境次第です。既存がもし 1Gbps iSCSI であるなら、ボトルネックはおそらくパスにありますので、恩恵を分かりやすく受けられると思います。

絶対値としては、製品化している各社のベンチマーク結果を見ると
600 〜 1200 MBytes/sec が ODX 処理の最大値 のようです。おそらく、現行のストレージアレイのほとんどが x86 アーキテクチャであり、バスの速度に限りがあるためだと思います。
なお、リアルタイム重複排除を併用すれば、実際はコピーされず、リンクを張るだけですので "数値的には" 10 GB/sec も夢ではありません。

ちなみに、Hyper-V 仮想マシンの場合、VHD/VHDX 経由はオーバーヘッドとなるのか、オフロードにもかかわらず Virtual FC と比べて 20% 程度性能が落ちました。


参考: 各種インターフェイスの理論値(ワイヤースピード)


では、パスが 8 〜 10 Gbps ある場合には ODX は意味無い??


ストレージアレイとのパスが 10 Gbps クラスの場合、パスの帯域は大きなボトルネックにはなりません。このくらいの帯域になると別ところで恩恵が受けられます。
それは Hyper-V 仮想マシン です。

Hyper-V 仮想マシンの仮想 SCSI はディスク I/O を vCPU を使って処理します。
このため、スループットが高ければ高いほど CPU 負荷が上がり、10 Gbps クラスの帯域の場合、1 〜 2 vCPU では右図のように割り込みで振り切ってしまうのです。
もちろん、4 〜 8 vCPU 割り当てることでも回避できますが、ODX を利用できるのであれば vCPU を増やさなくても転送に掛かる CPU 負荷はほぼゼロで済みます。


ODX の今後 「アレイベースバックアップへの適用」

LAN 経由でも ODX が掛かることは 以前 説明しました。
現在、この技術を「バックアップ」に活かそうと、一部のバックアップソフトベンダーで開発が進められています。
アレイベースのバックアップは転送時間に優れますが、アプリ整合性が取りづらい。逆に LAN 経由の Agent バックアップは整合性は確実ですが、容量によっては夜間に終わらないなどの懸念があります。ここに ODX を適用すれば、LAN 経由の整合性とアレイベースの転送時間の両方のメリットを得られるわけです。
これが実現すると、
仮想化の "悩みの種" であるバックアップが大きく改善されると期待しています。



ODX をこれから導入・検証する方へ

最後に私が検証した際にハマった留意事項を2点。
テストデータは iometer を使い、中身がランダムがファイルを作りしましょう。
ファイルサイズはキャッシュから溢れるよう 50 GB くらいはあった方が良いです。
また、KB2796995 は適用することを強くお勧めします。

Microsoft KB 2796995 - Offloaded Data Transfers fail on a computer that is running Windows 8 or Windows Server 2012
http://support.microsoft.com/kb/2796995


ここで、ODX についての概論は区切りたいと思います。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!
ストレージエンジニアや開発者向けのマニアック情報は 別途公開 します。


2014.3.29 追記:
ハイパーバイザーが Hyper-V ではなく VMware ESXi の場合に、WS2012 ゲストで ODX ができるかどうかについても書きました。こちら をご覧ください。