シンクライアントのネットワーク帯域について考えてみる
以前の記事「帯域遅延装置を簡単に作る」のとおり、
VDI といったシンクライアントソリューションはネットワークの回線帯域・品質について左右されるソリューション。
サーバーの設置場所としてデータセンターを借りている場合には回線の契約グレードが気になりますし、拠点オフィスの場合は専用線にした方が良いか悩ましいところです。モバイル用途では、昨今流行の "データ通信専用の格安SIM" の帯域・遅延で大丈夫かどうか気になるでしょう。
この疑問はオンプレミスだけではなく、Amazon WorkSpaces といった DaaS サービスを検討する場合も変わりません。有名な指標 "ストレージは 20 IOPS" と同様に、ネットワーク要件として 1ユーザー 150 Kbps という指標がありますが、2015 年を迎える今日となっては後者は少し古いかもしれません。
動画再生やリダイレクション
150Kbps という値は基本的に画面描画のみ。
しかし、流れるデータはこれだけではありません。
一番分かり易いのは音声。動画はもちろん、Windows のちょっとした効果音でもネットワークを通じて音声データが送られてきます。例えば 64Kbps の音声品質だった場合、ほぼ同じ帯域量にオーバーヘッドが上乗せされてネットワークを流れます。
なお、ここで注意したいのは、多くのプロトコルで アクセス端末のボリュームをミュートにしても音声データはネットワークを流れている ことです。
音声データをネットワークに流したくない場合は、リモート側をミュートにしましょう。可能なら「Windows Audio」サービスも止めておきたいところ。*1
同様に、下記のリダイレクションも帯域圧迫を招きます。
モニタサイズ
意外と盲点なのはモニタサイズ。
昨今ではフルHDのモニタが1万円を切る形で販売されていますし、むしろ20インチ未満の新品モニタを探す方が大変になってきました。モバイルに至っては、iPad Retina(2048×1536)や MacBook Pro(2880×1800)など、フルHDすら超えるものが普及しています。
モニタサイズと連動して解像度も増えるわけですが、画面の広さ、
つまり「画素数」はどのくらい増えるか考えたことはありますでしょうか?
画像引用元: http://www.elsa-jp.co.jp/products/graphicsboard/quadro_k6000/index.html
呼称 | 解像度 | 画素数 | XGA との比率 |
---|---|---|---|
VGA | 640×480 | 307,200 | 39 % |
SVGA | 800×600 | 480,000 | 61 % |
XGA | 1024×768 | 786,432 | 100 % |
FWXGA | 1366×768 | 1,049,088 | 133 % |
SXGA | 1280×1024 | 1,310,720 | 167 % |
WXGA++ | 1600×900 | 1,440,000 | 183 % |
UXGA | 1600×1200 | 1,920,000 | 244 % |
Full-HD | 1920×1080 | 2,073,600 | 264 % |
WUXGA | 1920×1200 | 2,304,000 | 293 % |
WQHD | 2560×1440 | 3,686,400 | 469 % |
WQXGA | 2560×1600 | 4,096,000 | 521 % |
iPhone5 | 1136×640 | 727,040 | 92 % |
iPhone6 | 1334×750 | 1,000,500 | 127 % |
iPad3 (Retina) | 2048×1536 | 3,145,728 | 400 % |
MacBook Pro (Retina) | 2880×1800 | 5,184,000 | 659 % |
iMac (Retina 5K) | 5120×2880 | 14,745,600 | 1,875 % |
つまり、OS やアプリといった PC 環境を一切変えなくても、シンクライアントの場合は モニタを新調するだけでネットワーク消費量が増える のです。
考えてみれば当たり前のことですが、多くのお客様がこのことを忘れており、トラブルを招いています。
差分転送だから解像度は関係ないのでは?
Citrix ICA や PCoIP、最近の RDP といったモダンな画面転送プロトコルは、画面全体の転送するわけではありません。変更の入った差分領域だけを送ることで、転送量を抑えるインテリジェントな技術が備わっています。
「差分領域だけなのであれば、さっきの解像度(画素数)は関係ないのでは?」と思ったかもしれません。
ただ、考えてみてください。
いま開いているこのブラウザはウィンドウを最大化してないでしょうか...?
そうなんです。
下の広告写真のように、アプリウィンドウを複数並べて作業している、という方はほとんどいないんです。Windows ユーザーはモニタが大きくなっても最大化して、全画面スクロールをしてしまうものなのです。。。*2