仮想化でプリセールスしてるSEの一日

VMware から Azure まで、インフラや仮想化の最新情報をベンダー色をできるだけ抑えて綴っていきます

Azure Backup で VMware 仮想マシンのクラウドバックアップ構築手順 (2)

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昨日のつづき です。
VMware 仮想マシンを VADP 経由でちゃんとクラウドバックアップしてくれる Microsoft Azure Backup Server(MABS)について、VMware 環境への接続設定と、実際のバックアップ、価格感や注意点をまとめます。

MABS を VMware 対応バージョンに更新 (KB3175529)

2016年12月現在、公開されている MABS のインストーラーは、
VMware バックアップ未対応の古いバージョンとなっています。

管理 UI 内にある「更新プログラムの確認」をクリックするか、
ダウンロードサイト に直接アクセスして、アップデータ*1 をインストールしてください。

アップデートが無事完了すると、「管理」画面の「運用サーバー」をクリックした際にVMware の管理」といった項目が登場します*2


MABS バックアップサーバーと vCenter Server を接続

VMware バックアップ対応バージョンに更新したら、既存の vCenter Server と接続しましょう。MSFT 側で動画が用意されているので、そちらをご覧になるのが一番です。

Four simple steps to Backup VMware VMs using Azure Backup Server
https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/four-simple-steps-to-backup-vmware-vms-using-azure-backup-server/


各動画の内容は次のようになっています。

  1. vCenter CA 証明書チェーンのインポート
  2. MABS バックアップサーバー用の制限アカウントの作成(任意*3
  3. vCenter Server を登録
  4. バックアップジョブの作成

バックアップジョブ設定項目

バックアップソフトは「バックアップジョブが命」ですので、スクリーンショットをいくつか載せておきます。 ※ それぞれクリックすると拡大します。


バックアップターゲット選択画面(vCenter の仮想マシンフォルダ表示と一緒です)
VADP を叩くので仮想マシン単位。私の環境は仮想マシンが 200 台弱あるのですが、この手にありがちなフリーズなどは起きず、問題ありませんでした


D2D2T 的なバックアップですが、実は Azure へバックアップせずに
無償の D2D バックアップツールとして使うこともできます


こちらは Azure へ送る D2T 側のスケジュール設定


日次や週次データを全部保管し続けると使用量が増え続けるため、
古くなったデータは間引くことも可能です


ジョブ一覧画面
「指定どおりに動作しているか?」を重視した UX に見えます


レポート作成機能 もあります。
移植元のまま「DPM レポート」になってますね (笑)


他社のクラウドバックアップツールとの違い

3rd Party を見回せば、クラウドバックアップツールは正直言って結構あります。
しかし、Azure Backup はそれらと根本的に違うアドバンテージを持っています。


Azure Backup一般的な
クラウドバックアップツール
クラウドストレージ契約プランAzure BackupAzure Storage
バックアップ先ストレージAzure Storage の専用バージョンAzure Storage の通常バージョン
クラウドストレージ利用料○ 格安△ 高め
送信データ転送利用料○ 無償△ 課金対象
バックアップソフトウェア○ 無償△ 有償
差分・圧縮バックアップ○ あり△ ツールによる


気づきましたでしょうか? 携帯電話のデータカード専用プランと同様に、
Azure Backup は「バックアップ専用」の契約プランとなっています。

AWS のバックアップ専用ストレージサービスである Glacier は 3rd Party にも開放されていますが、Azure Backup は開放されていません。ですので、一般的なクラウドバックアップツールの場合は Azure Backup を使用できず、汎用クラウドストレージ(Azure Storage)を使わざるを得ないのです。
これらは仮想マシンを格納して動かしたりする Tier1 のストレージサービスですので、バックアップ保管領域に使うにはかなり高くつくのです。


Azure Backup の場合、50 GB の仮想マシンの丸ごとバックアップで 1,000 円。
年間で 12,000 円、5 年間利用してもたった 6 万円*4。しかもリストア時にダウンロード転送の追加課金は発生しない。契約プランから違いますので根本的に有利となっています。


転送速度やセキュリティは大丈夫?

Azure Backup は LRS/GRS といった三重化構成を取りつつもとても安価ですので、速度についてはそんなに期待できないのですが、これは運用上デメリットにはなりづらいでしょう。なぜなら、D2D2T 型*5 だからです。
一時領域の D2D までは同じデータセンター内でありますので、高速にバックアップできます。リストアについても、物理障害でフルリストアしたいのであれば、MABS サーバーに残っている D2D 一時領域から戻せば時間も掛かりません。
セキュリティについても、MABS バックアップサーバーだけがプロキシなどを通じてインターネットに出れれば十分です。


ハイブリッドクラウドは保守体制が重要

クラウドバックアップはかなりライトですが「ハイブリッドクラウド」の一種。
ですので、保守体制は特に気にしましょう。オンプレ側とクラウド側、そして穴になりやすい「繋ぎこみ」に至るまで、トラブル時にたらい回しされず、まるっと ワンストップで窓口対応 してくれるかどうか、窓口選びは重要だと思います。
どこの業者と保守契約するかは注意を払いましょう。

*1:MicrosoftAzureBackup-KB3175529.exe

*2:ベースが SCDPM2012 UR11 相当になります

*3:Adminstrator@vsphere.local を利用しても技術的な問題はありません

*4:実際にはデータ圧縮が行われるため容量課金は少なくなります。また世代保管をする場合、追加保管する差分データは別途課金されます

*5:本来 T は Tape を意味しますので、Cloud の意味で「D2D2C」と言うこともあるそうです