仮想化でプリセールスしてるSEの一日

VMware から Azure まで、インフラや仮想化の最新情報をベンダー色をできるだけ抑えて綴っていきます

WANem で Software-Defined なネットワーク帯域制御装置を作る (2)

(1) (2) (3)
前回 のとおり、tc qdisc + WANem フロントエンドは高機能、
かつ精度の高い帯域制御を実現できます。
しかし、これを帯域制御「装置」として活用する場合は、使いづらい点がいくつかありますので、カスタマイズを加えていきたいと思います。内容的には完全に Linux ノウハウです。


1. 環境の確認

下図のように、既存のネットワーク上に設置するシナリオを前提にします。


WANem を動作させるマシン

WANem OS の要求スペックは非常に低い。

CPU1 core 以上(できれば 2 core)
RAM512 MB 以上
HDD4 GB 以上(= RAM×2 + 3GB) ※ SD や USB メモリでも可
NIC2 ポート
その他CD-ROM ドライブ

もちろん、仮想マシンでも構いません。
VMware ESXi の場合は次のように設定すると良いと思います。

構成カスタム
仮想マシンバージョン(任意:v8 など)
ゲスト OS モードDebian GNU/Linux 6 (32ビット)
仮想ソケット / コア1 ソケット / 2 コア
メモリサイズ512 MB
ネットワークVMXNET3 モードを 2 個
SCSI コントローラー(任意:使いません)
ディスク4 GB / シンプロビジョニング
仮想デバイスノードIDE (0:0)
フロッピードライブ(削除)

WANem のバージョン

stable バージョンは v2.3 ですが、ベース部分の Linux や tc (iproute) パッケージがあまりに古いため、今回は最新ビルドの v3.0 Beta を利用していきます。
v2.3 を利用する場合は以降の手順が大きく異なるほか、セキュリティへの懸念や、ドライバセットが古いために最近マシンでは動作しないかもしれません。


WANem v3.0 BetaWANem v2.3

Knoppix 6.7.1 (2011.09.21)

Debian 6 (squeeze)

Linux kernel 3.0.4

iproute 20100519-3

Knoppix 5.3.1 (2008.03.26)

Debian 5 (lenny)

Linux kernel 2.6.24.4

iproute 20080108-1


2. WANem を HDD にインストールする

WANem は Knoppix ベースの Live CD です。
Live CD はレスキュー CD としては便利ですが、vmware-tools といった追加パッケージをインストールできないほか、設定やカスタマイズ内容を保存できません。電源を落とすたびに設定やカスタマイズ内容が初期化されてしまうのは「装置」として運用的に厳しいため、HDD にインストールします。
※ WANem のサイトに Virtual Appliance 版が用意されていますが、こちらも中身は単なる CD ブートです。


では、HDD インストール作業に入りましょう!


まずは通常どおり Live CD で CD ブートします。
左下のスタートメニューから [Preferences] - [WANem HD Install] を実行します。
※ SD カードや USB メモリの場合は [Install WANem to flash disk] を実行してください

「0wn - WANem Installer」という GUI ウィザードを進めていきます。


インストール先ディスクを指定する下記画面では、最初に disk を選択します。


パーティションが作成されますので /dev/sd(a)2 を指定してください。


※ 作業中、下記プロンプトがポップアップされたら Cancel してください。


選択したパーティションに OS イメージがコピーされると、
ブートローダーのインストール先を問われますので mbr を選択します。



これで HDD へのインストールは完了です。
ウィザードにしたがって再起動し、CD をイジェクトしてください。
HDD からブートし、runlevel 3 で起動。自動ログインが行われます。


startx を実行すると GUI インターフェースが起動できるようになっています。



HDD からブートできるようになりましたら、
あとはネットワーク周りをカスタマイズして完了です。つづきは 次回



※ 2013.12.15 追記
HDD からのブート時に「Booting the kernel.」で止まってしまった方、冒頭のとおり ESXi 仮想マシンでは IDE シミュレーションである必要がありますので確認を。




本ブログは vExperts Blog Advent Calendar 2013 に参加しています。
明日 12/14 は @yueisu913 さんの「Horizon ViewでWindows Serverを仮想デスクトップとして使おう」です。