仮想化でプリセールスしてるSEの一日

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Hyper-V の NIC チーミング (1) - Hyper-V がチーミングを実装しない理由

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Hyper-VVMware ESX と違い、ハイパーバイザーレイヤで NIC チーミング機構を実装していません。
この理由と各社ベンダーのサポート状況などを 3 回に分けて触れたいと思います。


(1) Hyper-Vチーミングを実装しない理由
(2) 各社のサポート状況
(3) NIC Teaming と VLAN は併用できない?
(4) 2011年現在の最新情報


Hyper-VNIC チーミング機構を実装しなかった理由

これは、Hyper-Vアーキテクチャ"マイクロカーネル型" を採用していることに由来します。
マイクロカーネル型とは、自身でドライバを持たないハイパーバイザーのことで、Hyper-VXen 系などが採用しているアーキテクチャです。これに対し、VMware ESX/ESXi はハイパーバイザー・カーネル自身でドライバを持つ "モノリシック型" を採用しています。



マイクロカーネル型は、ホストOS のデバイスドライバをそのまま使えるところが特徴です。しかし、この構造はユーザーにとってメリットは少ないでしょう。Hyper-V とは関係ない現象でもデバイスドライバがちょくちょくバージョンアップされてしまうからです。

では、マイクロカーネル型で嬉しいのは誰でしょうか...?

答えは「ハードウェアベンダー」です。


VMware ESX のような "モノリシック型" 構造だと、専用のデバイスドライバが必要になります。このため、ハードウェアベンダーは 1 からドライバを作り、動作検証、不具合修正を強いられるのです。
ハイパーバイザーのバージョンが上がれば、またやり直さなければならず、莫大なコストが繰り返し発生します。


Microsoft が "Windows Server Virtualization" という名前でハイパーバイザーをリリースすると言われていたころ、正直ハードウェアベンダーは、一気に流行し、短いスパンでバージョンアップを続ける VMware ESX 向けのドライバ作成のために、余力が一切残っていませんでした。
この状態で Microsoft がモノリシック型でハイパーバイザーをリリースしたとしても、疲弊しているハードウェアベンダーはどこも賛同してくれませんし、デバイスドライバが無いと、どんなにユーザーが使いたくても使えません。


Micorosoft はこれを察知して、ホスト OS のドライバをそのまま利用できる、マイクロカーネル型に切り替えたのです。

Hyper-V が成功すれば、ESX 用ドライバ作りで疲弊していたハードウェアベンダーが VMwareHyper-V 移行を後押ししてくれる」という側面も考えていたと思います。


NIC ドライバもチーミング・スタックも Windows Server 2008 / 2008 R2 と共通

このような理由で、Hyper-V は "あえて" マイクロカーネル型を採用し、各種デバイスドライバは親パーティションWindows Server 2008 と共通のものを利用してもらうことにしました。

これは、NIC Driver も NIC Team Driver も Windows Server 2008 / 2008 R2 用のものを使ってもらうことになりますので、古くからの Windows のルールに倣いチーミング・スタックは 3rd Party 任せ」になったというわけです。

まとめると、NIC Teaming を 3rd Party に任したかったというよりは、
Hyper-V リリースを取り巻く状況から、3rd Party に任せざるを得なかった」というのが実際の背景と言われています。


次回 は各社のサポート状況を紹介します。