仮想化でプリセールスしてるSEの一日

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Windows Server 2012 Hyper-V の Synthetic Virtual FC 構築手順 (3)

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(1) (2) (3)

Synthetic FC について少し補足したいと思います。


仮想 HBA に WWPN が2つ付与される理由

前回、ゲストに割り当てる仮想 HBA は "Dual-Port" HBA のように、なぜか1枚あたり2つの WWPN が付与されると書きました。



記事公開後、コメントいただいたのですが、
やはりこの2つの WWPN にはやきちんとした理由があるそうです。

ファイバー チャネル接続を維持したまま、Hyper-V ホスト間での仮想マシンのライブ マイグレーションをサポートするには、仮想ファイバー チャネル アダプターごとに 2 つの WWN (図 1 に示す Set A と Set B) を構成します。
ライブ マイグレーション中に Set A と Set B の WWN アドレスが Hyper-V によって自動的に切り替わります。これにより、すべての LUN が移行前の移行先ホストで使用でき、移行中にダウンタイムが発生しません。

http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/hh831413.aspx


簡単に言えば、SR-IOV での迂回処理 と同様に
Live Migration を実現するための独自実装を行っているとのこと。

イーサネットMAC アドレスと異なり、FC トポロジは色々とシビア*1 であり、Live Migration 時に WWPN を移行先ホストに "瞬間移動" させることはできません。


Hyper-V ではこのワークアラウンドとして、
仮想 HBA にあらかじめ同じデータを流す2つのポートを用意して、ホストを移す際に Active ポートを「A → B → A → B → ...」と交互に切り替えているようです。


簡単に絵にしてみました。



更に Live Migration するとこんな感じ。(クリックすると拡大)


したがって、ストレージ側で LUN をホストへの割り当てる際は、付与される両方の WWPN(アドレスセット A, B)どちらも割り当てる必要があります。


WS2012 Hyper-V ではホストクラスタにサービス監視機能が追加

前回の最後に、仮想マシンによる4ノード・ゲストクラスタを載せましたが、実はゲストクラスタを組む理由が "プロセス監視" 程度であれば、Windows Server 2012 ではゲスト内で WSFC を構成する必要はありません。
WS2012 の Hyper-V では、VMware HA 機能に相当する "ホストクラスタ" に 「サービス監視」 機能が新しく実装されています。



VMware HA でサービス監視を実装するには、SDK ベースでアプリを開発するか、Symantec ApplicationHA といった、サードパーティ製品が必要になりますが、WS2012 の Hyper-V はそういった作り込みや有償製品が無くても、標準でゲスト内のサービスを監視できるので非常に有効です。


VMware にも NPIV 機能はある

VMware 話のついでに... VMware も数年前から NPIV を実装しています。


しかし、VMware の NPIV は「ゲストクラスタ」をサポートしていません。

vSphere MSCS 設定の制限事項
このリリースの vSphere の MSCS 設定に関して、次の環境および機能はサポートされていません。

  • iSCSI、FCoE、および NFS ディスク上のクラスタリング
  • 混在環境。たとえば、1 つのクラスタ ノードが、もう 1 つのクラスタ ノードとは異なるバージョンの ESXi を実行している構成。
  • MSCS と vSphere FT (Fault Tolerance) の併用。
  • クラスタリングされた仮想マシンの vMotion® での移行。
  • N-Port ID 仮想化 (NPIV)
  • ネイティブ マルチパス (NMP) でパス ポリシーがラウンド ロビンに...
http://pubs.vmware.com/vsphere-50/index.jsp?topic=%2Fcom.vmware.vsphere.mscs.doc_50%2FGUID-6BD834AE-69BB-4D0E-B0B6-7E176907E0C7.html


VMware は NPIV ではない、独自機能で MSCS ゲストクラスタに対応しています。しかし、この独自機能はノード数や vMotion 不可など制約が多く、なかなか使いづらい...
MSCS が要件に入るような信頼性の高い仮想化システムは VMware の強い領域ですので、VMware にも NPIV によるゲストクラスタのサポートに期待したいところ。


Hyper-V の NPIV は FCoE 環境でも OK

FCoE では、イーサネット上に FC プロトコルを流しますが、このような環境でも Hyper-V の NPIV は利用できるようです。同僚が Emulex 社の OneConnect CNA と HP FlexFabric を利用し、「FCoE + NIC 分割機構 + Nested NPIV」というかなり複雑な環境で、ゲストクラスタの動作を確認したと話していました。

*1:Fabric Login, Logout 処理など