仮想化でプリセールスしてるSEの一日

VMware から Azure まで、インフラや仮想化の最新情報をベンダー色をできるだけ抑えて綴っていきます

VMware vSphere 5.1 の SR-IOV 構築手順 - (4) まとめ と SR-IOV の将来

f:id:ogawad:20190203195705p:plain:right

(1) (2) (3) (4)

まとめです。


SR-IOV の効果的なシナリオ

良いことばかり書いてしまいましたが、デメリットもあります。
vSphere 5.1 や KVM の SR-IOV はとてもピュアな実装です。
色々手を加えている Hyper-V と違い、VF を割り当てた仮想マシンは vMotion や HA・スナップショットなどが使えなくなります。




vMotion や HA が使えないなんて...
「仮想化のメリットが削がれる」と感じるかと思います。私もそう思います。


以前に Lync Server の例 を挙げましたが、こういった SR-IOV の対象になるようなエンタープライズ・クリティカル系のアプリは、MSCS や独自方式による 「アプリレベルの冗長化 が必要とされ、HA や vMotion といった仮想マシンレベルの冗長化は取らないケースがほとんどです。バックアップについても、ハイパーバイザースナップショットではなく、きちんとした手法が求められます。

ブログタイトルのとおり、それなりの数の実案件に携わらせていただいていますが、仮想マシンが数百になるような大規模統合基盤・社内プライベートクラウドでは、どうしても数%くらい MSCS/WSFC を必要とするサーバーが残るものです。


そして、高度な冗長化が求められるアプリは、得てして高い性能を求めます。
SR-IOV は vMotion や DRS でバンバン移動するような一般サーバー用ではなく、
従来 "ご法度" とされていた重鎮ミドルウェア、つまり エンタープライズアプリの仮想化を実現する機能 と捉えるべきです。


具体的に思い浮かべると、、
I/O が激しかったり、サポートがうるさいものばかり。


つまり今後は、

仮想マシンレベルの冗長化で良ければ SR-IOV は使わず VMware HA で冗長化
アプリレベルの冗長化が必要であれば SR-IOV + MSCS。

というような使い分けが、
顧客ニーズとテクノロジーの落としどころになってきそうです。


SR-IOV の将来

SR-IOV 単体だと Live Migration や HA はできませんが、
前回 のとおりソフトウェア仮想スイッチでは 10Gbps 超のスイッチングはかなり厳しく、将来的にはミドル〜ローエンド層の対応、つまり汎用化が必至です。
この部分については、IEEE 802.1Qbg (EVB: Edge Virtual Bridging) という
IEEE の標準規格があり、ネットワークベンダー各社が対応を進めています。

仮想スイッチ技術の標準「EVB」、ライブマイグレーション時の運用自動化へ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110920/368989/


SR-IOV 対応 NIC/CNA は量産化されました。あとはこれに VEB (Virtual Ethernet Bridges)VEPA (Virtual Ethernet Port Aggregator) という拡張技術が加われば Live Migration や HA も実現できるようになります。




IEEE 802.1Qbg EVB, VEB/VEPA についての詳細は次の資料を参照ください。


ちなみに、Windows Server 2012 Hyper-V では SR-IOV と Live Migration の併用を既に実用化しています。こちらは VEB/VEPA ではなく、業界の誰もが「それやるか!?」と驚いた とても高度な実装 です。


VMware vSphere 5.1 で SR-IOV を利用するための要件

最後に、vSphere 5.1 で SR-IOV を利用するための要件をまとめておきます。

現行モデルであればそれほど大きな敷居はありません。
ですので現時点では SR-IOV は考えていなくても、これから仮想化用のハードウェアを調達するのであれば、将来のことも考えて SR-IOV 対応品を選んでおいた方が無難だと思います。*1
ハードウェア買い直すより、設定変更で済んだ方がマシですよね。


  • ハイパーバイザー
    • VMware ESXi 5.1 Enterprise Plus
    • GUI で設定したい場合には WebClient が必要
    • Distributed Switch (vDS) は不要


なお、上記のいくつかは VMware のマニュアルに記載がありますが、
最新情報については下記のチェックもお勧めします。

VMware KB 2038739: SR-IOV support status FAQ
http://kb.vmware.com/kb/2038739



2013.03.14 Cisco さんのホワイトペーパーを追加。一部の表現を変更しました。
2013.05.21 SR-IOV のゲストサポートに関する KB (2045704) を追記しました。

*1:ハードウェアが SR-IOV さえ対応していれば、IEEE 802.1Qbg EVB 対応は通常ファームウェア更新だけで済むと言われているため。

*2:VM-FEX + SR-IOV で VEPA っぽい動きを取ります。詳しくは こちら