仮想化でプリセールスしてるSEの一日

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移動ユーザープロファイル環境での Outlook 利用が非推奨に!?

先日、このブログ内で 移動プロファイルは提案したくない と書いたとおり、私は移動ユーザーを極力提案しないのですが、最も大きな理由を書き忘れてしまいました。。。

「移動ユーザー環境では Outlook が利用できないからです」

正確には、「移動ユーザー・プロファイル環境で Outlook を使う場合、メールを PC に受信してはいけない」になります。

つまり、

  • メールサーバーが POP の場合:
    → 利用不可
  • メールサーバーが IMAP の場合:
    → メールは常にサーバー側で保管し、PC に受信しなければ OK
  • メールサーバーが MAPI (Exchange) の場合:
    → メールは常にサーバー側で保管し、PC に受信しなければ OK
      Exchange キャッシュモードは利用不可

Microsoft がサポート外と明言している


Outlook のデータファイルである pst ファイルは
「%USERPROFILE%\AppData\Local\Microsoft\Outlook\outlook.pst」にあります。
この AppData\Local フォルダは、システムの重要な設定が含まれるため、PC 間で共有すると不安定になりがちです。このため、Microsoft はこのフォルダを移動プロファイルの対象外としています (ExcludeProfileDirs)。

であれば、pst ファイルを移動プロファイル対象内に置けばよい と思いますが、数 GB まで膨れ上がる pst ファイルを移動プロファイル対象にすると、ログオン・ログオフ時間で業務が回らなるため、運用的に却下でしょう。


ログオン・ログオフ時間を解決するために「フォルダ・リダイレクト*1 を使えば良い」と考えがちなのですが、Microsoft がこれを NG としています。

移動ユーザー向けの Outlook の構成
メモ PST、OST、または PAB ファイルを ネットワーク共有*2 に配置してリモートでアクセスするように Outlook を構成することはサポートされていません。

http://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/three/ch8/OutC03.htm

Outlook 2010 で "サポート外" → "非推奨" に一歩前進


このような理由で、移動ユーザー・プロファイル環境 + Outlook は、ここ10年近く NG 状態が続いていました。
pst ファイルの構造を考えると、リモート越しに読み書きするのは危険すぎる!という Microsoft の気持ちも分かります。
pst ファイルは一種の DB なので
OracleMSSQL の DB を CIFS に置きますか?」ということです。
うーん...と思っていたら、Office 2010 になって少し理解を示してくれました。
"サポート外""非推奨" に一歩前進です。

Outlook データ ファイルの概要 - Microsoft Outlook 2010
注意
Outlook データ ファイル (.pst) をネットワーク共有、または別のコンピューターに置いてアクセスすることは、データが損失する可能性が高いのでお勧めしません。

http://office.microsoft.com/ja-jp/outlook-help/HA010354876.aspx

Microsoft KB 949486
移動ユーザー プロファイル環境で Exchange キャッシュ モードを有効に設定した Outlook 2003、Outlook 2007 または Outlook 2010 を起動できない場合がある

マイクロソフトでは、移動ユーザー プロファイルを構成した Active Directory ドメインにおいて Exchange サーバーに接続する Outlook クライアントを使用する場合には Exchange キャッシュ モードを無効にすることをお勧めします。

http://support.microsoft.com/kb/949486/ja


メールデータ消失のリスク()は変わらないので「結局ダメじゃん...」と思うかもしれませんが、以前よりこの問題に悩まされている SE としては嬉しい話です。
といっても、Citrix PVS などのシングルイメージ技術と同様に、お客様の運用に不便を掛けたり、データ消失のリスクがありますので、VDI, XenApp, TerminalService などで移動ユーザーを検討している場合は要注意です。
Outlook を利用しているのに移動ユーザーを勧められた場合は、この点をどう考えているかよく議論すべきと思います。
なお、VDI であれば移動ユーザー無しで運用する方法もあります。(→ 前回



2012.02.13 追記
データ消失等のリスクについて、もっと知りたい方は下記を参照してください。


2016.04.30 追記
2016 年の状況をまとめました。

*1:ファイルサーバーにデータを格納して、都度ネットワーク越しに読み書きする手法

*2:ここでいう「ネットワーク共有」とは、LAN 経由でアクセスするという意味で、UNC パスだからとかネットワークドライブだからとかは関係ありません