Citrix ICA プロトコルの実際の消費帯域 (2)
昨日の記事 に書いたとおり、ローカルPCと判別できないくらい画面描画がなめらかであることが VDI 化の重要なポイントであり、そのためにはある程度の回線帯域が必要です。
そして、VDI 製品を提供する Citrix, VMware, Microsoft は各々異なる描画プロトコルを推進しており、必要帯域は各々のプロトコルによって違います。
Citrix ICA プロトコルは本当に 20〜30kbps で大丈夫?
必要帯域の少なさをマーケティング的に非常に訴求しているのが、Citrix の ICA プロトコルです。
このプレゼン資料からも分かる通り、ICA プロトコルは差分情報のみの転送であり
消費帯域は 20〜30kbps と謳われています。
これは、ISDN や 56kbps モデムの半分、少し前の FOMA(384Kbps) の 10分の1 以下の速度です。
1秒間に 4KB しか通信できない ということになりますが、本当にこれだけの帯域で大丈夫なのでしょうか...?
実際は、テキストだけのデータでも 500Kbps 消費することも...
この答えの一つとして、日経BP社の ITpro で、ICA プロトコルの検証結果が掲載されています。
スライドショーの再生には十分な帯域を - デスクトップ仮想化の苦手なアプリ: ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100924/352315/?ST=virtual
この記事は Citrix 社のレビューを経て掲載したようなのですが、興味深かったのが下記のテスト結果です。
ランダムな数字を <p> タグで閉じた1万行のHTMLファイルをIE8で開いてウィンドウを最大化し、スペースキーを押してファイルの最後までスクロールする処理を行った。
らしいのですが、写真ではないテキストだけのデータにもかかわらず ICA は 500Kbps 消費していることが分かります。
さらに、次のページにあるとおり、PowerPoint のスライドショーの検証結果について Citrix 社から次のコメントを受けたようです。
シトリックス・システムズ・ジャパンは「ICAの利用帯域が小さいのは、プロトコルの圧縮およびキャッシングの技術によるもの。スライドショーの処理なら、一般的には数百kビット/秒の帯域で十分」と説明する。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100924/352315/?ST=virtual&P=2
ICA は 30Kbps なんかでは全く足りないというのを Citrix 社自ら公言しています。
もしかしたら、先ほどのプレゼン資料の "30Kbps" というのは、ユーザーが PC を触っていないアイドル状態の数値を表しているのかもしれません。もしくは 800x600 のような低解像度でのデータなのか...
どちらにせよ、ちょっとでもユーザー操作があれば 数百Kbps に到達してしまうわけで、20〜30Kbps という表現はあまりにも非道いと思います。
最後に、今回二日にも渡ってなぜこんな記事を書いたかというと、
あるお客様が 64Kbps ベースで画面転送ネットワークを設計してしまい、火の車になっている。という話を耳にしたからです。
上記検証結果からも分かる通り、XenDesktop や XenApp など ICA プロトコルを利用する場合、1ユーザーあたり 150〜200Kbps (1024×768 解像度の場合) は最低限確保できるようにしましょう。
VMware の PCoIP プロトコルを使う場合も同じです。
あらためて書きますが、30Kbps では 1秒間にたった 4KB しか送れません...